プロジェクションマッピングで、生徒の主体性を引き出す。
藤原 網野高校の課題研究っていつからスタートしたんですか?
廣瀬 平成6年に商業科から企画経営科に学科改編されて以来、必修科目としてある専門科目なんです。
藤原 もう25年以上も取り組んでるんですね。
廣瀬 生徒の主体性を引き出すことを目的にしているんですけど、生徒は最初、「なんで先生は教えてくれへんの?授業やろ?」って戸惑うんです。ポイントを押さえて指示すると次の課題に取り組んでいくという感じですね。社会人講師の方に協力していただくことは生徒たちにとって新鮮ですし、講師の後ろ姿を見て育つ部分もあると思います。
藤原 そう言っていただけると嬉しいです。恥ずかしくなりますけど(笑)。地元の高校でプロジェクションマッピングを教えることになるなんて、夢にも思わなかったので。
廣瀬 私は生徒たちにプロジェクションマッピングを通して、ひとつの作品をつくってるんだっていう自覚と責任を持ってもらいたいんですね。なんとか形にして、達成感ややりがいをひとつでも実感してほしい。そして、自己肯定感を持って卒業してほしい。そのために課題研究が役立てばいいなと思います。
藤原 仕事では利益で返していかなければならないけど、生徒たちに授業を通じてどうなってほしいかなって考えたら、やる気で返してほしいんですよね。それが自分にとって一番のご褒美なんです。作品は荒削りでも一生懸命やりきったならば、それでいいというか。
藤原先生ではなく、藤原さんとして。
廣瀬 藤原さんはどんなことを意識して授業されているんですか?
藤原 そもそも教えることが初めてでしたけど、先生ではなく、地域の人が教えに来たような距離感でいたいと思ってますね。フランクな関係づくりというか。
廣瀬 私の場合は、藤原さんが求める答えを生徒ではなく私が答えたら、私のアイデアになってしまうじゃないですか。なので、いかに生徒の口からそれが出るのを待つか。すごく我慢勝負なんです。
藤原 僕は要所でヒントを出すという感じですね。そういう意味では、僕が当たり前だと思っていても、生徒たちはどうしたらいいのかわからないことが結構あると感じていて。検索ひとつにしてもキーワードや調べ方を見せながら教えています。そうやって最初のうちは伴走し続けることで、自走してくれると思うので。
廣瀬 プロジェクションマッピングって、建物以前にスクリーンに投影するだけでも大変なんだなって。動画の編集も時間がかかるし、私も生徒も「たった1秒なのに、これだけかかるの?!」って驚きでした。
藤原 去年、授業の成果として道の駅でプロジェクションマッピングを投影し終わった後、生徒たちから長文のLINEが届いたんです。感謝の気持ちが詰まっていて、あれを読んで、本当にやってよかったなって。普段の仕事とはまた違う達成感や嬉しさがありましたね。

いつか、教え子と仕事できるように。
廣瀬 藤原さんは普段、いろいろな会社の映像をつくっていますけど、生徒に教える経験から仕事に持ち帰れるものってありますか?
藤原 2年間、生徒たちのそばで授業を進めていますけど、この近い距離感で何かをつくり続けることを京丹後を中心にやっていけたらと思っていて。企業と伴走してプロジェクトを成長させていくようなところを伸ばしていきたいですね。
廣瀬 なるほど。課題研究の効果としては、地域が元気になる方法を考えたい、将来は京丹後市役所の職員として働きたい、地域のことを発信していく職業に就きたいという生徒が出てくるようになりました。
藤原 地元の魅力を再発見する機会になってるんですね。
廣瀬 京丹後って都会と比べたら地味だけど、都会にはないものがたくさんあるじゃないですか。ヒト、伝統産業、食といった地元の良さって、一度外に出てみないとわからない。私は卒業後にどこに行っても京丹後っていいなと思える、そんな郷土愛を持った子を育てたいなと思っています。
藤原 将来的に僕が教えた子が地元に戻ってきて、一緒に仕事できるなんて日も来るかもしれない。そうなったら最高ですね。

