People & Conversations
vol.03 | 2019 | December

味噌づくりもクリエイティブも、踊ってなんぼ。

CONVERSATION WITH 五味醤油
清水柊子×五味仁 洋子

VEJ山梨を甲府に開設してから早いもので4年が経ちました。
最初はミッチェこと宮沢喬だけでしたが、2017年に清水柊子が入社し、2019年には筒井亜胡と佐藤哲も仲間入り。
少しずつですが、山梨の仕事も増えてきました。VEJは地元の人たちにどう映っているのか。
甲府で150年以上も続く五味醤油の五味仁さんと洋子さんを清水柊子が訪ね、VEJのことや味噌づくりとクリエイティブの共通点などを聞きました。

文:加藤 将太 写真:田尾 沙織

山梨の仕事は、地元のつくり手とやりたい。

 VEJが甲府に来てから何年経つんだっけ。
柊子 4年目。私が入社して3年が経つのかな。
洋子 一応確認するけど、ホームページと映像をつくる会社なんだよね?
柊子 うん。イベント会社と間違えられるけど(笑)。ミッチェさんはウェブのプログラマーだけどVJもやっているから、その印象が大きいのかも。それにウェブ制作の内容ってわかりにくいし、さらにミッチェさんが映像もつくっているとなると、VEJが何をやっているのか伝わりにくいのかもしれない。ウェブも映像も、山梨の人たちには馴染みがないというか。
 なるほどね。今回、五味醤油のウェブサイトのリニューアルをお願いしてるけど、「ウチらみたいな中小企業が仕事を頼んでいいの?」っていう敷居はあると思うよ。ウチのお母さんは「VEJって何?」って怪しがってたからね。
柊子 そんなことない(苦笑)。山梨オフィスとしては、地元の仕事をやることで地元を盛り上げたい気持ちがあるから。地元のつくり手たちとやりたいし、そこに規模は関係なくて。
洋子 VEJがつくるサイトって基本的にかっこいいよね。普通は「このサイト、どこがつくってるの?」なんて日常会話で話さないけど、誰かに見せたくなる。
 甲府にオフィスがあるのに、あのイケてるアーティストのサイトもつくってるんだっていう驚きもあるし。
柊子 でも、私にとって、発酵兄妹は山梨のクリエイティブの先駆者的な存在なの。甲府で味噌をつくりながらお店もやっていて、全国で食のイベントとワークショップ、歌って踊りながら味噌づくりもしてる。私とミッチェさんは相当影響を受けているんだよね。
 そういう意味では、ウチらがワイワイ楽しむルーツはワインツーリズム*を主催してる大木さんとかがかっこよく活動していて、そこに引っ張られる形で踊り始めたというか。

手づくりの文化は、ウェブにも残り続ける。

 おれも洋子も柊子ちゃんもUターン組だけど、VEJはゼロからオフィスをつくって人を採用し続けているでしょう。それってすごいよ。
洋子 VEJが求人募集したとき、私は誰かのSNSの投稿をシェアすることはほぼないんだけど、いい人に入社してもらいたくて、思わず拡散しちゃった。
柊子 ありがたいことにSNSで告知しただけなのに、18人も応募があったんだよね。
洋子 クリエイティブの会社でしかも未経験者OKっていう採用は地方で貴重だと思う。
柊子 それは私が前例としてあるのが大きいのかもしれない。
 東京で新卒を採用するよりも地元で未経験のUターン組を採用するのは可能性がある。
洋子 最初が柊子でよかったんだよ。
 ところでさ、VEJはこれからも企業のウェブサイトをずっとつくり続けていくの?もっと教育とかさ、社会レベルでウェブがあってもいいと思っていて。
柊子 私も教えることにVEJの未来がある気がしていて。
 ウェブって進化のスピードが速いじゃん。昔はフラッシュでつくられたサイトがかっこよかったけど、今はまったく見かけなくなった。フラッシュ全盛期のクリエイターって今何をやってるんだろう。
柊子 それ、ミッチェさんだ!だから、ミッチェさんがつくるサイトは演出がリッチなんだよね。そういう意味では、VEJは時代には乗っているけど、未来を見据えた展開を考えなければいけなくて。それがイベント事業なのかもしれないし、ウェブと映像と何かの融合が出てくるのかもしれない。
 ウチらは大量生産できる味噌を手づくりしているでしょう。今は簡単にウェブサイトをつくれるサービスがあるのかもしれないけど、手づくりの文化はウェブにも残り続けていくと思うんだよね。
柊子 全部のサイトに簡単につくれるサービスがハマるのは難しいと思う。絶対に譲れないこだわりを叶える存在として、私たちの仕事があるんだなって。
 ウチらがやってることは100人の中の数パーセントの人たちに届けばいいなと思ってる部分があって。学校に入り込まなくてもさ、英会話教室みたいな感覚でウェブの教室をやってほしいな。
洋子 公文式じゃないけどVEJ式みたいな。話は変わるけど、柊子は友達じゃなくて仲間だと思うんだよね。ちょっとダサいかもしれないけど、このニュアンスわかる?
柊子 一緒に遊んでふざけたことをしつつも、真面目な話もできるってことだよね。
洋子 そうそう。こうやって仕事や街とか、未来について語れる間柄なんだよね。
 おもしろいかどうかって思えるのは、踊れるかどうかってことだから。
柊子 私たちも踊りながらウェブを教えてみようかな(笑)。
洋子 VEJの人たちはキーボードを打って画面を見すぎてるから、健康の意味でも踊ったほうがいいよ。

*ワイナリーでワインを味わいながら、ぶどう畑、飲食店、温泉など山梨県の地域資源を巡って楽しむイベント。

五味 仁・洋子

甲府で150年以上続く老舗、五味醤油の六代目の兄と広報担当の妹。夫婦と間違えられるが、発酵兄妹として全国に味噌づくりの文化を伝えている。「手前みそのうた」でグッドデザイン賞を受賞。洋子さんはVEJの清水と宮沢と同時期に骨を折った骨折仲間でもある。
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