New Decade, New Beginnings
vol.04 | 2020 | December

New Tokyo Office

VEJらしいオフィスの在り方

VEJの本社機能がある東京オフィスは青山から下北沢に移転しました。下北沢はVEJ創業の地にあたります。2020年に会社設立20周年を迎えましたが、原点回帰の意味はありません。すべては進化していくために、私たちは新しい街と空間を拠点にすることを決めました。

取材・文:加藤 将太(OVER THE MOUNTAIN) 写真:山田 薫

本当に仕事を回せるのか?

新型コロナウイルスが日本国内で流行し始めた2020年2月のこと。政府が東京を中心に在宅ワークを推奨するなか、VEJも取締役の池田を中心に勤務体制について議論しました。感染状況が深刻ではない甲府と京丹後オフィス以上に、東京オフィスにとっては非常にセンシティブな問題でした。

「本社と支社という関係では、甲府と京丹後はすでにリモートワークを行なってきました。だから、東京スタッフの感染リスクを最も懸念するべきかなと。いきなりは始められないという声も上がったけど、すぐやれるという話になったんですよ。VEJとしては下準備があったからスムーズに移行できて」

下準備とは、2020年夏に開催予定だった東京オリンピックの混雑対策。東京オフィスがあった青山エリアは賑わうことが必至だったため、時間差出勤のトライアルを始める予定にありました。

「一方で、本社のリモートワークに対して反対意見もありました。本当に仕事を回せるのか?という不安が徐々に出てきて。その理由としては人間関係というか。デスクの横に誰 かがいて仕事する。そこから何かが生み出されると感じている人たちが、このまま続けて大丈夫?となるのはわかる。ただ、リモートワークの何かしらのメリットにみんなが気づいていたんですよね」

実際に仕事の手間が増えたのは事実です。たとえば、ディレクター陣がデザイナーやコーダーに意図を伝える時間は増え、意思の疎通が難しくなりました。一方で、自宅で作業する心地よさが仕事を好転させる要素になることもあります。

「コミュニケーションの課題は今後もしばらく抱えていくでしょうね。その反面、通勤しなくなったことで、家族との時間をつくれるようになったり、実はslackのほうが意思を伝えやすいという人がいたりすることもある。いろいろと要素を整理していくなかで、東京オフィスの移転を決めたんです」

原点回帰ではなく、進化のための移転。

東京オフィスの移転を考え始めたのは6月でした。3月に完全リモートワークに切り替えてからは青山のオフィスに毎日出社していたのは池田だけ。つねに15人前後のスタッフが集まっていた場所に独りしかいない。そんな状況が半年も続いたことで、9月末には移転を決めたのでした。

「広大な空間に自分だけがいる。それなのにスペースを持ち続けるのはどうなんだろうと。リモートワークのデメリットを解消するのではなく、メリットを拡張していく。そのためにも東京のオフィスは移転したほうがいいと判断しました。より結束感の強いチームをつくるために環境を変えたかったんです」

11月から入居している新オフィスは通称「代田の切通し」。竹の植栽と木漏れ日が気持ちいい物件は、VEJ創業の地である下北沢にあります。創業20周年に下北沢に戻ってきましたが、原点回帰の意味合いはありません。

「むしろみんなには、この場所で進化していくんだということを実感してほしい。不思議なもので、オフィスの人数が多いと、みんなあまり話さなくなる。お互いを思いやっているんだろうけど、VEJには合っていなかったのかもしれない。実際に少人数で集まったほうが会話が活発になる部分があって。これを機に、働き方と一緒に会社の雰囲気もより良い方向につくり直していけたらと」

集合写真を撮りたかった理由。

3階建ての新しいオフィスは住居としても 募集されていた物件です。空間は青山よりも狭くなり、デスクの数がスタッフの人数に対して足りていません。限られたスペースの共有と固定デスクをほぼ廃止したフリーアドレス。そこにはどんな意図があるのでしょうか。

「ぼくのデスクすらありませんからね。もしも使えるデスクがなかったら、近所のBONUS TRACKで契約したワークスペースで仕事すればいい。BONUS TRACKはいろいろな人が出入りする場所だから、そこで誰かが交流することで新しい出会いが生まれることを期待しています。簡単にはいかないと思うけど、チャレンジはしていきたいですね」

コロナ禍で離れた場所にいながらも、今まで以上にお互いの生き方や働き方に対する価値観を垣間見た。そう感じているスタッフは少なくないかもしれません。池田は「これからは全員で一同に集える機会は本当に貴重なものになる。だからこそ、スタッフと向き合う時間を大切にしたい」と続けます。

「全員で集まれる機会は今まで以上に大事にしていきたくて。だから、集合写真を撮りたかったんです。コロナ禍で一番変わったのは自分かもしれない。今を楽しく過ごさなけばいかんなと思うようになりました。オフィスの隣りには、無料で使える体育館もあるんですよ。スタッフと仕事の合間に体を動かしたいですね。バスケでもしながら」