New Decade, New Beginnings
vol.04 | 2020 | December

ゆるやかな繋がりから生まれた
酒蔵×ライブ配信

VEJ京丹後が拠点を構える丹後地方は日本酒の産地としても知られています。 コロナ禍の影響から日本酒のイベントは軒並み中止に。危機的な地元の酒蔵を支援するために企画されたのが「KuraNomi 〜丹後と乾杯〜」です。日本酒のつくり手である杜氏とオンラインで酒を酌み交わす。このオンラインライブイベントの発起人は坂田真慶さん。配信システムの構築を担当した藤原徹也と語る、プロジェクトから得たものとは。

取材・文:加藤 将太(OVER THE MOUNTAIN) 写真:町田 益宏

東京にはない、ゆるやかな繋がり。

藤原 ちょうどぼくが3年前に京丹後に戻ってきて。シェアオフィスに入居しはじめたタイミングで、坂田くんもそこに“住み”始めていたよね。シェアオフィスなのに(笑)。

坂田 そうだね(笑)。当時は東京で京都の移住関係の仕事をしていたんだけど、その関係で京丹後に来ることがよくあって。ぼくは移住の相談に乗る立場だったのに、最終的には自分が京丹後に移住することになっていたという(笑)。

藤原 坂田くんはどうして京丹後に移住しようと思ったの?

坂田 もともと、この街の森・里・海の資源とか人の繋がりがおもしろくて、自分に何かできることはないかなと思ったのがきっかけかな。当時は海外の子どもたちが京丹後で学べるプログラムを企画していたんだけど、足繁く通っているうちに地元の人との繋がりができてきて。なんとなく住んでみるのも良さそうだなというイメージが湧いてきたという感じかな。昔、中国やインドネシアで暮らしていたこともあるから、見知らぬ土地に対しての抵抗感みたいなものがなくて。

藤原 人の繋がりのおもしろさって? 

坂田 人との距離が近かったり、コミュニケーションが生まれやすいところがある。顔が見える関係性っていうのかな。東京では職業を中心に関係が決まっていたけど、京丹後は仕事も暮らしもかなり近いところが大きく違うよね。

藤原 坂田くんはコミュニケーションをとることを楽しんでいるよね。ぼくの印象として坂田くんは公共性が高い人物というか。

坂田 誰かの相談に乗るというスタンスが大きいのかも。その人がやりたいことを聞いたり、自分がやりたいことを共有したり。仕事に発展するかどうかは関係なく、ぼくは話すことが好きだから。

藤原 自分は京丹後に戻ってきてから会話をすることがすごく増えた。映像制作を教えてきた高校生から地域のお年寄りまで。その振れ幅は東京に住んでいた頃はなかったなと。

坂田 地域全体がゆるく繋がっているから多様な関係を築けるのかもしれない。だから「KuraNomi ~丹後と乾杯~」も形にできたんだと思う。

日本酒のつくり手の心にふれる。

藤原 ぼくも坂田くんもお酒を飲むことが大好きで。

坂田 うん。コロナの影響で観光客が京丹後に来れないから、外の人たちと繋がれたり、市内の人も含めて酒蔵に興味を持つような企画ができないかなと思って。

藤原 映像としてはYouTubeでライブ配信して。その構想は早い段階で決まっていたよね。不特定多数というよりも特定少数の人たちと繋がって、丹後を知る・見直す機会にしたかった。最初は長尺にする予定はなかったけど、40,50分くらいのボリュームに着地して(笑)。

坂田 もともとは30分を想定していたけど足りなかったよね。初回の向井酒造杜氏の向井久仁子さんがもっと話したいとノってきてくれたことが功を奏したというか。

藤原 4つの酒蔵のライブ配信をしてみて、 何か発見はあった?

坂田 それぞれの酒蔵のロケーションがめちゃくちゃいい場所だなと。景色も含めて。たとえば、向井酒造は海に面していて、与謝娘酒造は里山と田園の風景が良かったりして。もうひとつ、酒蔵同士のコミュニケーションがあまりなかったことは意外だった。みんな忙しいから自分の酒に対する想いを語る機会ってほとんどなかったらしく。だから、回を重ねるごとに各酒蔵の杜氏さんたちがゲスト的に参加する構図になっていったのは嬉しかったな。

藤原 杜氏さんが他の蔵を見学して、そこでコミュニケーションが生まれたりして。今は代替わりをして若い杜氏さんが増えているなかで、現状をより良くしたい気持ちの方々が多いと思う。だから今回の危機的な状況にも、やれることはやってみようと思ってもらえたからこそ「KuraNomi」も実現できたのかも。

坂田 たしかに。あとは改めて、杜氏さんの個性に触れたことで、その人となりがお酒の味にも表れることがわかったのも大きいよね。今回の映像からそう感じた人がいると思うし、もっと丁寧に伝える何かがあるとおもしろいと思う。

藤原 今回の趣旨としては、お酒自体を紹介するというよりも人柄を知ってもらうことが大きかったと思う。あの杜氏さんは明るいな、この杜氏さんは穏やかそうだな、とか。そういうインプットがあるなかでお酒を飲むと、お酒に対しての想いが重なって覚えてもらいやすくなるかなと。

坂田 そういう意味では、映像を見た人が自分なりのストーリーを描けるかどうかが大事だと思う。この人がつくっているからこの味 なんだと自分の中で解釈できて。それを周りに伝えてもらうことで、いろいろな人に京丹後の酒蔵を知ってもらう。日本酒を売りまくるというよりは伝える部分をより前面に出す。そういう横に広がるコンテンツをつくっていきたいな。

藤原 そうだね。コロナの状況次第ではあるけど、リアルイベントもやれるといいね。

坂田 真慶

丹後暮らし探求舎 代表理事
東京都出身、京丹後市在住。2017年に京都移住コンシェルジュの仕事がきっか けで丹後にIターン。丹後で暮らす人々が日々楽しめるコミュニティづくりや移住 支援を行っている。有志団体、All tango Actionのメンバーでもある。

藤原 徹也

VEJ京丹後 映像ディレクター
京丹後市出身。2017年にUターンしVEJ 京丹後を設立する。京丹後の新規クライアントを開拓しながら本社の映像制作にもコミット。地元高校生に映像制作を教えるなど、プロダクション業務の枠を超えた活動もこなしている。

1918年に創業した前身の亀屋から続く熊野酒造。久美浜湾の最南岸にあり、目の前から湾を一望できることから酒銘を「久美の浦」としている。
古代米(赤米)を使用した、果実のような甘酸っぱい「伊根満開」で一躍有名になった向井酒造。風光明媚な伊根湾に面した伝統建築も見事。
丹後の美味しいコシヒカリで美味しい日本酒を造る白杉酒造。日本酒造り用の酒造好適米は一切使用しない、素材へのこだわり。
1887年創業、家族を中心に酒造りを行う与謝娘酒造。裏山の清水を仕込み水に使用し、伝統的な日本酒以外に新たなお酒の開発にも着手。

The Project

〜丹後で乾杯〜

丹後の土地や酒蔵の風景と、普段はなかなか聞けない酒造りに対する想いやお酒の製造背景を肴に、丹後の酒蔵の杜氏と楽しく一緒にお酒を飲む、全4回のオンラインライブイベント。YouTubeにアーカイブ。

We Moved

京丹後オフィス移転のお知らせ

2020年4月1日より京丹後オフィスは京丹後市峰山町へ移転しました。新しいオフィスはなんともレトロな外観。ご年配も出入りする施設なので、ほのぼのと和やかな雰囲気がなんとも言えない癒しです。

『映像制作なら おまかせのVEJ』の 看板が目印です!

奥野 由希
アシスタントディレクター